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向田邦子のリアリティーとホラーの融合 「家鳴り」篠田節子

家鳴り
Kindleのサンプルを何気なく読んでみて気に入ったので購入した。
7話を収録した短編集。

普段の生活の中の人物の心理描写がすごい。
篠田節子の作風は向田邦子に似ていると思った。
向田邦子と違うのはそのリアリティにホラー要素が入っているところ。

単行本自体は1999年に刊行されたものなので、山一證券破綻(1997年)や阪神淡路大震災(1995年)から題材を取っている。
あれから2007年サブプライムローンから始まった金融危機、2011年の東日本大震災があり全く古さを感じない。
1999年から15年以上の歳月が経つが日本が未だにあの時と同じ状況で立ち止まっているということなのかもしれない。

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幻の穀物危機

地方に移住してきた主人公は脱サラ農家の岡田という男と出会う。
気さくで快活な岡田に主人公は好感を抱くが、岡田は「いずれ穀物危機が来る」という偏執狂的な考えを持っていた。
そんなある日大規模な地震が発生し東京は壊滅状態になる。

日本の自給率の低さに警鐘を鳴らす内容。
本の刊行は1999年だったので阪神淡路大震災から着想を得たのだろう。
現実では2011年の東日本大震災でも店舗からの略奪などは起こらなかったと聞く。
日本全土が壊滅状態にならない限り食料を巡る殺し合いはないと思う。
これは自分が被災経験がないからこんなことを言えるのかもしれない。
自分が生きている間にこんな極限状態を体験しないで済むよう祈るだけだ。

やどかり

哲史はエリート官僚で教育センターで実務研修をしていた。
ある時、両親に見捨てられた智恵という少女の家庭教師をすることになるが…

いや~な後味。
狡猾さと純粋さが入り交じる女の怖さが味わえる話。
もし智恵が本当は頭が良いのに学習機会に恵まれない少女だったら。
もし智恵が普通以上の容姿の女子中学生だったら。
感動的な話になったり背徳的な話になるのかもしれない。

しかし智恵は根本的に勉強ができず丸暗記しかできない。
容姿も鼻の下に黒い産毛を生やした固太りのもっさい女の子なのだ。
それが余計に主人公と読者を苛立たせる。
最後の智恵の意外な行動に驚きを感じた。

操作手(マニピュレーター)

介護という現実的な題材にファンタジーが入った話。

介護に係わる人間のキレイ事ではない本音が見え隠れする。
孫娘・嫁・姑からのそれぞれの視点で語られる。
この3代の女のリアルな視点は女性作家ならでは。
厳しい環境で生き抜いてきた姑が心の重荷を開放するシーンは感動的だった。
まだ介護に全く関わったことのない人は是非読んでみてほしい。

水球

この短編集の中で一番怖いくて面白いと思った話。
一番向田邦子っぽいとも言える。
1997年の山一證券の破綻をベースにしている。

向田邦子の小説は表面上はさほど大きな破滅代わりに主人公は不穏な思いやしこりをそのまま抱えて今まで通り生きていく話が多い。
だが、この主人公は地獄坂を転がり落ちるがごとくすべてが崩壊してゆく。
最後に清々しい描写があるのが救いとも言える。


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