携帯怪談「ようこ」が解禁！中山市朗 ダークナイト vol.18

２０年程前の話。Ａさんという男性がいた。
ある日、携帯電話に非通知設定で「ようこ」と名乗る女から「あなたのことが好きです」という電話が掛かってくる。

Ａさんには当時、彼女がいたのでようこからの告白を断ったが、ようこは毎日電話を掛けてくる。
Ａさんはようこに全く心当たりがなく、会ってみようと提案するが、ようこはかたくなに拒否する。
ようこの話し方には感情の起伏が全くなく、Ａさんの職場や人間関係・行動まで把握しているなど不可解な点が多くあった。

交際を断り続けるＡさんに対し、ようこは「それならＡさんの彼女を殺す」と言い出し始めた。
実際にＡさんの彼女は危険な目に遭うが、Ａさんが間一髪で助けて事なきを得た。
ようこはＡさんの彼女を殺すことは諦めた。

Ａさんはようこが恐ろしくなり、携帯電話番号を変えたりキャリアを変更したりするが、ようこからの電話はなくならない。
ついにＡさんは携帯電話を持つことをやめた。
しかし一緒にいる会社の同僚の携帯にまで、ようこからの電話が掛かってくるようになりだした。
さすがに周囲に迷惑がかかるので、仕方なくまた携帯電話を持つようになった。

Ａさんはそれから彼女と結婚したが、ようこからの電話は相変わらず掛かってくる。
Ａさんはようこの電話に応対し続けた。
ある時、ようこは別の男性と付き合っているようなことをＡさんにほのめかした。
それから次第にようこからの電話は減っていった。

ある日、久しぶりにようこから電話があった。
その内容は、男の子を出産して、その父親はＡさんだというものだった。
もちろんＡさんはいまだにようこに会ってさえいないのでその子の父親のはずがない。
ようこは子育てに専念しているのか、それから電話は掛かってこなくなった。

数年後、Ａさんは離婚を前提とした別居をすることになった。
別居をした日、久しぶりにようこから電話があり、ようこは初めて感情を露わにして
「奥さんと仲がいいＡさんが好き。奥さんと離婚するのは許さない」
とＡさん夫婦の離婚に反対した。

結局１年後にＡさんは離婚をした。
離婚をしたその日、Ａさんの携帯に無言電話が掛かってきた。
Ａさんは無言電話の主に「ようこか？」と尋ねたが、そのまま電話は切れた。
それ以来ようこから電話はかかってこなくなった。