小耳袋「新耳袋 八甲田山」のタブー

八甲田山怪談ライブで聞いた公に発表できない話、印象に残った話などを忘備録もかねて共有・紹介していこうと思います。
名付けて「小耳袋」。お楽しみいただけたら幸いです。

10年以上前に新耳袋の著者中山市朗氏から直接聞いた話。

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新耳袋「八甲田山」あらすじ

「八甲田山」の話を知らない方、忘れた方のために簡単にあらすじを紹介します。
本編はもっと状況説明が詳しく面白いので、ぜひ「新耳袋 第四夜」を読んでみてください。

明治35年1月、青森県の八甲田山で日本陸軍が一泊行軍を行った際に、猛吹雪と強烈な寒波により、210人の兵隊のうち199人が凍死した。
世界山岳遭難史上最大の惨事と言われる「八甲田雪中行軍遭難事件」である。

青森県の大学に通っていたYさんは、そういう知識はまったくなかった。
ある初夏のこと、友人たちと八甲田山に夜のドライブに出かけた。
そこで突然車のエンジンが止まり、ザッザッザッと思い靴音が響いたと思うと、大勢の黒い男たちに車をぐるりと取り囲まれた。
なんとかエンジンをかけて、アパートのある弘前市に戻った。

アパートに戻って4人で震えていると、再びザッザッザッと靴音がして、部屋に全身黒ずくめの軍服の男たちが現れた。
4人を取り囲んで男たちは口々にこう言った。
「わしはこの男の右腕がほしい」「俺は足がほしい」「わしは左手がほしい」
Yさんたちは気絶し、気がついたら昼になっていた。
部屋を見回すと、泥の付いた靴跡が自分たちを取り囲むように残っていた。

Yさんはこの出来事が原因で大学をやめ、千葉の実家に帰った。
も二度と青森へ行くつもりはないという。

新耳袋「八甲田山」の疑問

八甲田山が収録されている「新耳袋 第四夜」の文庫版のあとがきを読んでいて疑問に思ったことがあります。この部分です。

削除によって成立させるという構成は『新耳袋』の成立と大きく関わっています。
その代表例が第五十三話の「八甲田山」です。
「え!何を削ったの?」残念ながら書けません。
~中略~
“怖さ”は当事者である著者にとっても過去のものとなりつつあります。
しかし、「八甲田山」だけは他者の体験談にもかかわらず、現在も“怖い”のです。

新耳袋第四夜に収録されている「八甲田山」は確かに怖い話です。
しかし、普通の読者から見れば、ドライブで幽霊を目撃して怖い目にあったという、よくある話のように思えます。

体験者でもない、新耳袋の著者がなぜこの話をここまで怖がるんだろう?
一体この話の何を削ったのだろう?
これがずっと疑問でした。

「八甲田山」タブーの答え

何かの機会で、著者の中山市朗氏と話す機会があったので、この疑問をぶつけてみました。

実はこのYさんを始めとする体験者4人は、このあと全員亡くなっている。
この話をしてくれたのはYさんのお姉さんである
、と教えてくれました。
体験者が全員死んでいるなんて、さすがに新耳袋では強烈すぎて書けませんね。

「では、八甲田山に行くだけで死んでしまうんですか?」と頭の悪い質問をした私に、中山市朗氏はこう答えてくれました。
「用事などで行くのは問題ない。遊び半分に行くと大変な場所だ」

しかし、北野誠氏の「おまえら行くな」や新耳袋殴り込みで取材していたりしてしていますが、誰も死んでいません。
(遊び半分ではなく、「仕事」という形だからかもしれませんが)
中山市朗氏が語らなかったタブーはまだあるのかもしれませんね。

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